【測定】測定器具の使用方法

製造業において、製品の品質を保証し、不良品の発生を抑制するためには、精密な測定が不可欠です。測定機は、製品の寸法、形状、表面粗さ、材質などを正確に評価し、設計図面や規格との適合性を判断するために用いられる重要な設備です。多種多様な測定機が存在し、製品の特性や測定目的に応じて適切なものが選択されます。本稿では、製造業における主要な測定機について、その種類、原理、特徴、および活用事例を解説します。

1. 長さ・寸法測定機

製品の基本的な寸法(長さ、幅、高さ、深さ、直径など)を測定するために用いられる測定機です。

  • ノギス(Vernier Caliper): 外側寸法、内側寸法、深さなどを手軽に測定できる汎用的な測定器です。主尺と副尺の目盛りを組み合わせることで、比較的高い精度での測定が可能です。デジタル表示式のものもあり、読み取り誤差を減らし、より精密な測定が可能です。
  • マイクロメータ(Micrometer): ねじの原理を利用して、より精密な外側寸法を測定する測定器です。スピンドルとアンビルで測定物を挟み込み、シンブルを回転させることで微小な移動量を読み取ります。外側マイクロメータの他に、内側マイクロメータや深さマイクロメータなど、様々な形状の測定物に対応した種類があります。
  • ダイヤルゲージ(Dial Gauge): 測定子の微小な動きを拡大して針の回転で表示する測定器です。治具に取り付けて、製品の高さ、平面度、振れなどを測定するのに用いられます。連続的な変化を捉えるのに適しており、加工中のワークの状態監視などにも活用されます。
  • リニアスケール(Linear Scale): 光学式や磁気式などの原理を用いて、直線的な変位を高精度に検出するセンサーです。工作機械や三次元測定機などに組み込まれ、移動量や位置情報を正確に測定するために用いられます。
  • 投影機(Profile Projector): 製品の輪郭を拡大してスクリーンに投影し、その形状や寸法を測定する装置です。複雑な形状の部品や、微細な形状の測定に適しています。フィルムチャートやデジタル画像処理システムと組み合わせて使用されます。
  • 画像寸法測定器(Vision Measuring Machine): カメラで捉えた製品の画像を解析し、非接触で寸法を測定する装置です。複雑な形状の部品や、多数の箇所を短時間で測定するのに適しています。自動測定機能を持つ機種もあり、生産ラインでの全数検査などに活用されます。

2. 形状・輪郭測定機

製品の形状や輪郭の精度を評価するために用いられる測定機です。

  • 輪郭形状測定機(Contour Measuring Machine): 触針を製品の表面に沿って移動させ、その軌跡を記録することで、製品の断面形状や輪郭を測定する装置です。複雑な曲面や微細な形状の評価に適しており、カムやねじ山などの測定に用いられます。
  • 真円度・円筒度測定機(Roundness / Cylindricity Measuring Machine): 製品を回転させながら、触針または非接触センサーで表面を測定し、そのデータのばらつきから真円度や円筒度を評価する装置です。ベアリングやシリンダーなどの精密部品の品質管理に不可欠です。
  • 三次元測定機(Coordinate Measuring Machine: CMM): X、Y、Zの3次元座標系に基づき、製品の表面上の点をプローブで接触または非接触で測定し、その座標値を記録する装置です。複雑な形状の部品の寸法、形状、位置などを高精度に測定できます。自動車部品、航空機部品、金型など、幅広い分野で活用されています。近年では、スキャニングプローブを搭載し、より高速かつ詳細な形状測定が可能な機種も登場しています。

3. 表面粗さ・表面性状測定機

製品の表面の微細な凹凸(表面粗さ)や、表面の傷、異物などを評価するために用いられる測定機です。

  • 表面粗さ測定機(Surface Roughness Tester): 触針を製品の表面に沿って移動させ、その微細な凹凸を電気信号に変換して表面粗さのパラメータ(Ra、Rzなど)を算出する装置です。ポータブルなものから高精度な据え置き型まで、様々な種類があります。
  • 走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope: SPM): 原子間力顕微鏡(AFM)や走査型トンネル顕微鏡(STM)などがあり、探針と試料表面の相互作用を利用して、原子レベルの分解能で表面形状を観察・測定する装置です。ナノテクノロジー分野や材料評価などで活用されています。
  • レーザー顕微鏡(Laser Microscope): レーザー光を照射し、その反射光や蛍光を検出することで、非接触で微細な表面形状や表面性状を観察・測定する顕微鏡です。高分解能での3次元形状測定や、生きた細胞の観察などにも応用されています。

4. 材料・物性測定機

製品の材質や機械的特性などを評価するために用いられる測定機です。

  • 硬さ試験機(Hardness Tester): 材料の硬さを測定する装置です。ビッカース硬さ試験、ロックウェル硬さ試験、ブリネル硬さ試験など、様々な試験方法に対応した機種があります。
  • 引張試験機・圧縮試験機(Tensile / Compression Testing Machine): 材料に引張力や圧縮力を加え、その際の応力とひずみの関係を測定することで、引張強度、降伏点、弾性率などの機械的特性を評価する装置です。
  • 成分分析装置(Composition Analyzer): 蛍光X線分析装置(XRF)、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)、原子吸光光度計(AAS)などがあり、材料に含まれる元素の種類や組成を分析する装置です。品質管理や材料開発に用いられます。
  • 膜厚測定器(Film Thickness Meter): 製品表面に形成された薄膜の厚さを測定する装置です。電磁誘導式、渦電流式、超音波式、光学式など、様々な測定原理に基づいた機種があります。

5. 特殊な測定機

上記以外にも、特定の目的や製品に対応した特殊な測定機が存在します。

  • 歯車測定機(Gear Measuring Machine): 歯車の歯形、歯筋、ピッチなどの精度を測定する装置です。自動車のトランスミッション部品など、高精度な歯車部品の品質管理に不可欠です。
  • ねじ測定機(Screw Thread Measuring Machine): ねじのピッチ、有効径、リードなどを測定する装置です。ボルトやナットなどのねじ部品の品質管理に用いられます。
  • 座標測定顕微鏡(Coordinate Measuring Microscope): 顕微鏡と三次元測定機の機能を組み合わせた装置で、微小な部品の3次元形状を高精度に測定できます。電子部品や医療機器などの精密部品の測定に適しています。

測定機の活用事例

製造業における測定機は、様々な工程で活用され、製品の品質向上に貢献しています。

  • 設計・開発段階: 試作品の寸法や形状を測定し、設計図面との差異を評価することで、設計の妥当性を検証し、改良に役立てます。
  • 製造工程: 加工された部品の寸法や形状を測定し、工作機械の精度管理や加工条件の最適化を行います。不良品の発生を未然に防ぎ、歩留まりの向上に貢献します。
  • 品質管理工程: 完成品の寸法、形状、表面粗さなどを測定し、設計図面や規格との適合性を検査します。合格品のみを出荷することで、顧客からの信頼性を確保します。
  • 組み立て工程: 組み立て部品の寸法や位置関係を測定し、スムーズな組み立て作業を支援します。組み立て不良を低減し、製品の信頼性を高めます。
  • メンテナンス工程: 使用中の機械部品の摩耗や変形を測定し、適切なメンテナンス時期を判断します。設備の寿命を延ばし、予期せぬ故障を防止します。

まとめ

製造業における測定機は、製品の品質を保証するための基盤となる重要な設備です。多種多様な測定機が存在し、それぞれ異なる原理と特徴を持っています。製品の特性や測定目的に応じて適切な測定機を選択し、正確な測定を行うことで、設計の最適化、製造工程の改善、品質管理の徹底、そして顧客満足度の向上に貢献することができます。近年では、自動化技術やAI技術との融合により、測定機の高精度化、高速化、省人化が進んでおり、今後の製造業において、その重要性はますます高まると言えるでしょう。

  • 生技マン

    新卒で金型設計者としてキャリアをスタートし、現在は生産技術エンジニアとして働いています。現場のデータを丁寧に拾い上げ、データに基づいた分析を行い、効率化と品質向上を目指した改善に取り組んでいます。 これまでの設計者としての経験をフル活用しながら、現場との連携を大切にし、具体的かつ実用的なソリューションを提案することに情熱を持っています。また、生産技術の分野での人材不足を解消するため、その魅力を発信する活動にも力を入れています。 生産技術の力で未来の製造業を支えることを目指し、日々挑戦を続けています!

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